エッセイ トルコの印象と感動
トルコへ
その旅の動機は
カッパドキア
奇岩 奇景に惹かれた旅
しかしカルチャーショックを
受けた 心の旅だった
東と西の文明が混ざり合い
繁栄していたイスタンブール
美しく壮大なモスク(寺院)
王族の数々の財宝
その富と地位を守るため
命を絶たれた王の弟たち
地中海の温暖な気候と
豊潤な大地
でもなぜか私の心に響かない
小さな露店でわずかばかりの
焼き栗を売る人
さらに貧しく立ち売りで
ミヤゲを売る老婆
そのわずかばかりの値段
まけさせようとする
ブランドバッグを持った豊かな人たち
悲しい気持ちで
イスタンブールを後にする
東へ行くにつれ
荒涼とした大地が広がる
粗末な日干し煉瓦で作られた
小さな家がぽつんとある
少女が薪を割る父を
見ている
土で出来た羊のエサ入れ
鶏が自由に走り回る
ほっとした雰囲気が
薪を割るおとこは
人なつこく笑い
家に招き入れてくれた
部屋は床が無く土間
家具はなくわずかばかりの衣類と
粗末なベット
そして炊事兼用のストーブ
でも今幸せという男の笑顔が
握手してわかれる
カッパドキア
一つの場所ではなく
それは広大な地域
不毛の大地
荒涼とした谷を降りる
ひとけのない
迷路のような道を
今まで見たことのない
異星のせかい
でも人の営みのあと
岩山の城壁が
小鳥もいない
静寂の世界
観光から
はずれた孤立の世界
一つの部屋から
昔そのままの眺望が
しかし別の世界が
この眺望もない
隠れた地下の町
このあたり
そっと隠れすみ
異教徒の迫害を逃れ
狭苦しい
地下で息を潜め
それでも信仰に生きた人々
地下七階にもおよぶ
入り組んだ洞穴と部屋
それでも火をたきすすけた壁の
生活のあと
苦しい閉ざされた空間
それでも信仰に生きた人々
キリストの 愛に生きた人々
未だ暗い朝のしじまをやぶり
モスクの塔から
朗々とひびく お祈りの声
一日五回も 祈りをささげ
酒も飲まず 断食までする
信心深い イスラム教の人たち
一部を除き 私たち 信仰は
葬式のセレモニーと化した
ものが豊かになれば
心が貧しくなるのだろうか
ミヤゲを値切る人が 重なって見えた
繊細な 少女が
自分の化身のような
じゆうたんを織る
そのしなやかな
指でこそ出来るじゅうたん
数年がかりで織り上げ
少女時代を燃焼する
人の気配で手をやすめ
しかしそのひとみは
なにかさびしそう
精魂込めて織り上げた
そのたから
冨のあるだれかに
わたる宝の織物