エッセイ 高嶺の花1
ゲンチァナ ! 俺の最も好きな花だ。 この花は日本には無い。
たましいが吸い取られるような 不思議な青 純粋な美の青
スイスアルプスの花
日本アルプスより
はるかに 花の数が多い
そして花の色も 鮮やかだ
それは日本の山に 無い気象
一日に 冬と夏が 訪れ
雪の訪問すらある
つかの間の ときに虫を誘う
美しく 次世代のために
数日前に 訪れた
花の楽園は 雪に閉ざされる
これが 今年7月10日の 現実だ
花達は そのわずかな
楽園の日々を
精一杯 美しく装い
虫たちの 訪問を待つ
目立つ美しさこそ 生き残る技
きびしい 楽園で生き抜くため
丈は低く 大地をはうように
しかしその花は 目立つように
大きく 美しいチングルマ
春に咲く おきなぐさも
この楽園では 仲間入り
虫たちを 誘おうと
美しい衣を広げ おいしい蜜をだす
昆虫のような 名前 ミヤマクワガタ
日本のもの(下)に比べて
色も青く濃い 現地の名前は 不明
日本のミヤマクワガタ 紫でやや小ぶり
不毛の岩地に咲く 逞しい花、アルプスセンペルビブム
空に向かって 虫を誘う マウンテンセンペレビム
ほどんと土のない 岩の割れ目に
耐えて生き続ける
クモノス センペレビム
よりあでやかな 花の色
更にきびしい 自然に耐えるため
サボテンのような 葉のあいだ
くものすのような 繊毛を持ち
草丈は更に短く
寒い風を かわしている
マッターホルンの ヘルンリ稜(登山ルート)
一般登山者 ハイカーは このヘルンリ小屋までだ
小屋から上は ロッククライミングの世界
絶壁が続く 生を拒否する世界
この垂直の 壁にしがみつき
生きている アンドロサケ、アルピナ
標高4000mで 生き続ける 氷河の花
天に向かって そそり立つ マッターホルン
生き物を拒絶するように 頂上を雪雲に隠す
マッターホルンの 初登頂者 ウィンパーが
下山中9人の仲間の 半数の人を墜落で 失ったルート
この絶壁で クライマーのように 岩に垂直に張り付き
それでも耐えて 生き続ける 氷河の花
温室育ちの花は 生きられない この環境 鍛えぬかれ
生き続ける逞しい花 アンドロサケ、アルピナ