第16話 プロポーズ大作戦
当時(30年前)有給休暇を半分も取らず流す人も多かった。
だが休暇はきれいに使いズッコケて山へ行き、首になりかけた事もあった。
しかし仕事も趣味と一致し、バンバンやっていたので何時のまにか会社の開発設計のチーフになり、業務用テレビカメラ、産業用テレビ機器をまかされていた。
その頃、俺は女性にあまり関心が無かった。それは女嫌いというのではなく、仕事、山、ヨット、スキー、とやることが多すぎただけである。そんなある時、俺は量産工場の仙台工場へ技術指導に行った。
ここで俺は電撃のようなシヨックを受けた。今まで見たことも無いような女性が事務所に、いたのだ。清楚で、それでほがらかさは太陽のよう、声もとてもきれいだ。
女性に免疫の無い俺は一ぺんにまいってしまった。
何か作戦は無いか!そこで当時まだ珍しかった車(従業員三百人の仙台工場でも三台しかなかった)を使う事に決めて、土曜日、車を取りに東京へ戻った。
仙台工場への出張は電車で来ていたのだ。さっそくドライブにさそった。
コースは山形の山寺へ行き、蔵王エコーラインを通って帰るというものだ。
一対一で誘うのはテレクサイので、同僚の女の子二人も誘い、一対三という構成で出かけた。
山寺で坂道を登り立石寺への途中、奥の細道芭焦の碑の前に着いた。静けさや岩にしみいるセミのこえというあれの前で俺はプロポーズした。
なんて言ったか忘れたが、たぶんセミの声のように俺の声も岩にしみこんでしまったからであろう。
いいあんばいにその時連れの二女性はいなかった。気をきかしたかな?
俺は強引にも、それから一週間のうちに結婚の約束をとり、結婚式の日取りまできめていた。
一緒に出張していた部下のNも同じく事務所の女性と結婚する事になり社内で大評判になつた。
こんな事があって間もなくカラーカメラを開発設計したので、カメラはイイ色が出て大ヒットしたのだと、もっぱらのうわさ!
社長も関心を持たれたらしく?仙台工場に来訪されたとき、わざわざお茶を運ばされたと、後で女房に聞いた。
社長へのお茶運びは総務の仕事であり経理の彼女の仕事ではないのだ。