第23話 結婚15周年
結婚して二年、四年目と子供が生まれ、どこの親も同しだと思うが、子育てに忙しく、
特に、ここに書くべき出来事もなく平凡な日々が流れた。
この間、チャレンジ精神で手を広げすぎた(入社時三百人がこのときには千七百人)会社は経営に行きづまり、大手のHに合併ざれた。
そして新婚から五年の八王子での生活の舞台は仙台へと移った。仙台の量産工場勤務となったのだ。そして、あっ!という間に十年の時が流れ、結婚十五周年が近づいた。結婚記念日の大きな節目である。
何をプレゼントすれば良いか?指輸などは一般的でつまらない。色々迷ったが、女房が結婚式で一回だけあったお色直しも着物だった。ウェディングドレスも着たかった、などと言っていたことを、ふと思い出した。
当時は髪とカツラをガッチリと結合させたので和装から洋装にスビーデイに髪型を変えることが出来ず、和式なら何回でも和式というあんばいだった。
そこで今回ウェディングドレスを着せてやろうと思いついた。
次の節目の二十五年では遅すぎるだろう。
この計画は秘密にしていたが小学生の子供たちには、そっと教えた。娘達は目を輝かせて秘密を守るといった。
公営の温泉保養所、蔵王ハイツというところに相談に行ったところ、この企画が面白かったのか、快くウェディングドレスと着付け師、写真屋を動員してくれた。
もちろん結婚式の忙しくない日をえらんだ。
当日女房には温泉に泊まりに行こうと誘った。ハイツの部屋でくつろいでいた女房を、あちこち見て歩こう、と、結婚式場へと連れ出した。
そして式場控室で待つ着付け師の前で、初めて本日の目的を話した。女房はびっくりし、目の玉が飛び出るほど目を丸くした。
このシーンは予想していたのでカメラを手に持っており、決定的な、びっくり顔の瞬間をスナップ写真にした。
着付け師は女房の髪をとかし、飾りを付けて、純白のウェディングドレスを着させる。
まだだれも着たことのない百五十万円の新しいドレスである。
よく似合って新妻のようで、これで小学校の子供がいるようには見えない。
思い切ったことをして金もかかったが、時間は過去へ戻れない。やはりよかったと思う。今これを書きながら、ことしの十一月に二十五年目を迎えるが、どうしようか考えた。
そうだ!と、この時思った。この手記を本にして贈れぱよいのだ。